疑問や不安があればきちんと確認ブログ:20-09-14
「お母さんみたいになりたくない」
おれは小さい頃から、漠然とそう思っていた。
無口で、格好なんて全然気にしなくて、不器用な母親。
母親のことを、なんとなく苦手に感じていた。
家で自営業を営む父親のかわりに、
外へ働きに出ていたからかもしれない。
同じ家の中にいるのに、あまりにも関わりが少なくて、
まるで他人のようだった。
大学入学とともに、おれは家を出た。
実家に帰省することはほとんど無くなり、
たまに帰っても一日中寝てるか、テレビを見るかだった。
帰りの遅い母親と会話をする機会も、必然的に減っていった。
「疲れたなぁ」「最近頭が痛いの」
たまに顔を合わせると、愚痴や弱音を呟く母親。
「薬でも飲んどけば」と、
ついつい素っ気無く返事をしてしまうおれ。
こんな調子だから、
おれ達の関係は深まることは無く、
平行線のように、交わることもない。
そんなおれも就職活動を迎えて、
色々と将来のことを考えるようになった。
会社を選ぶ際に、
おれは無意識に
「出産後も働ける環境か」
ということを気にしていた。
あぁ、おれはやっぱり母親の娘なんだ…
ずっと母親の背中を見てきたおれには、
そういう働き方以外思い浮かばなかったのだ。
実際に自分が育児と仕事の両立を考えると、
その負担の大きさが身にしみた。
母親は、連日そういう生活を送っていたのだ。
1週間位前、久しぶりに家族で銭湯に行くことになった。
何年ぶりだろうか。
母親と久しぶりに一緒にお風呂に入った。
二人とも、手足は痩せているのに
腹だけぽっこりと出ている体型で、
「遺伝なんだね」と笑いあった。
久しぶりに、母親と一緒に笑った。
- 注目サイト一覧 -
■川元誠一の案内
URL:http://kn.ndl.go.jp/list?creator=%E5%B7%9D%E6%9C%AC+%E8%AA%A0%E4%B8%80&viewRestricted=1&detailSearchTypeNo=A&searchMode=A
川元誠一